福岡市美術館で開催中の「永遠のソール・ライター」展(2023年1月18日〜3月5日)へ行ってきました。「エモい」という言葉が初めて腑に落ちました。もうすごく好きな写真ばかりで図録だけじゃなく、写真集も買ってきました。

画家に目指し、絵画の勉強をしていたソール・ライターですが、写真による表現も学び、それが仕事になっていきます。1950年代からニューヨークでファッション・フォトグラファーとして活躍。その後、1980年代に58歳で自ら商業写真から退き、世間から姿を消した状態になりました。80歳を超えた2006年に「Early Color」という写真集が出され再び脚光を浴びることになります。2013年、89歳でソール・ライターがこの世を去った後、アトリエでもあった彼の家から膨大な作品が未整理のまま残されていたとのこと。現在もソール・ライター財団がその膨大な作品のアーカイブ構築に取り組んでいる中での(少なくともあと10年はかかるらしい)展示です。

今回の展示では商業写真家になる以前の家族を撮影した写真から、ファッション・フォトグラファー時代の写真、「Early Color」を出版した頃の写真、そしてソール・ライターが亡くなった後に発見された写真を観ることができます。

それで、一点、とても気になったことがあるんですが…、いえ、先に書いたようにものすごく好きなんです。浮世絵のような構図だったり、色数を抑えた色彩(赤い傘だけがポイント色になっているとか)だったり、特に窓越しの写真など身近な風景を切り取った作品はソール・ライターの視線を体験できるような気がして、本当に素晴らしい作品群でした。

気になったのは…ソール・ライターが亡くなった後に発見された写真を財団の方なのかキュレーターのどなたかが整理し、作品として公開されているわけですが、その中にソール・ライターのパートナーだった女性のヌード写真もたくさんありました(コンタクトシートまで)。ヌード写真集も発売されています。ただ、これ、ご本人に作品として公開する意志があったのか、そして撮られた女性は公開されるつもりで撮られていたのかと。あまりにレベルが違いすぎて恐縮ですが、私はこのサイトもそうですがインスタなどでたくさんの記録写真(主におやつ)を公開しています。だからって、私の死後にカメラロールやHDDに未整理で放り込んでる写真データを公開されたら困ります。さすがにヌードはないですがお医者さんにネットで公開しちゃダメよと言われた骨折して手術したすぐの後のピンが刺さった指の写真とか、人に見せられない、見せたくない写真が山ほど入ってますから。っていうか、日頃、公開してるからって全部を人に見せたいわけじゃないのは当然じゃないですか。絵画と違って写真の場合、作品とプライベートな記録との境界がわかりにくいというのもありますが、人を感動させる素晴らしい写真を撮っているアーティストならなんでも公開止む無しなのかと、この展示を観た後、ちょっと悶々としました。ちなみに私の場合、死後、写真に限らずデータ消去されるサービスを利用したいです(Macは難しいらしいけど物理破壊していただきたい)。

いや、でも本当に素晴らしい展示でした。会場内部の写真は基本NGだったのでありませんが、入口とゲットしたグッズの写真を。

永遠のソール・ライター
左:ここだけ撮影OKだったソール・ライターの絵や愛用品などの展示
中:入口(会場外)
右:購入した図録、写真集、ポストカードとチラシ

そして同じ福岡市美術館の別の展示室で開催中の企画展「田中千智展 地平線と道」(2023年1月5日〜3月21日)も観てきました。漆黒の背景にきらめくような色彩の人物がまっすぐこっちを見ているような作品が印象的です。田中千智さんは美術館内の13mの白い壁に壁画を描かれていて1月の間はその制作されている姿を見ることができたんです。私が行った1月31日がちょうど壁画完成の日で、正に完成寸前の状態でした。まぁ、制作風景が見たくてギリギリ間に合うようにこの日に行ったわけですが。ちなみに壁画は美術館に入場しなくても外から見ることができます。今後、2024年1月、2025年1月に制作を行い、第2段階、第3段階と画面が変化していく予定とのことです。

田中千智さん壁画制作中

※「田中千智展 地平線と道」は会場内も撮影OKです。

年度末で動きが取れなくなる前に福岡アジア美術館で開催中の「バンクシーって誰? 展」(3月26日まで)も行かないと(チケットは購入済み)。